痛み治療 U

怪我をして3ヶ月ほど経ってから、RYUは違和感を訴え始めました。
胸椎の12番目と腰椎の1番目のところで受傷したRYUは、おへその下あたりから感覚が鈍く、足の付け根からは感覚はまったくないし動きもしません。

それがどういうわけか、痛くないはずの足の付け根、ちょうど車椅子に座ると曲がるところがピリピリするとか、痺れると訴えるようになりました。

その痛みは少しずつ、でも確実に強く、痛む時間は長くなってきて、退院して社会復帰を果たしてからはRYUの悩みの種でした。

そして怪我をしてまもなく3年になろうかという頃には、激しい痛みで夜は眠れず、車を運転するのも危険になるほどになってしまい、ようやく取り戻しつつあった日常生活を、痛みがまたもや奪ってしまおうとしていました。

なんとか夜眠れるようになるよう、様々な治療を試しました。それらを簡単にご紹介します。

ピンク色のところから感覚がにぶい。

オレンジのところはほぼ感覚がなく、力も入りにくい。

濃いピンクから下は、まったく感覚がなく力を入れることも出来ない。

の部分に激しい痛み
神経ブロック 外科的な傷からくる痛みではなく、神経からくる痛みの可能性が大きいと診断されて、神経ブロックの治療を受ける。

しばらくは効き目があり、眠れるようになったが慣れてきて効き目がなくなる。
神経ブロックと平行して行っていたのが投薬治療。

頭痛などに使われる痛み止めよりは、やはり神経に作用する安定剤などのほうが効き目があったようだが、内服薬はあまり劇的な効果は得られなかった。


結局一番使用したのが写真の暖かい湿布と、痛み止めの座薬。

これはずっと使い続けていました。
ひどくなるばかりの痛みに、主治医が紹介してくれたのが麻酔科。いわゆるペインクリニック。

痛みを根本から治すのではなく、痛みが伝わる道筋を邪魔しようというもの。

名古屋の病院を紹介してもらい、「脊髄電気刺激療法」を試してみることになりました。
治療の手順は、脊髄の周りにある硬膜と言う空洞の中に、写真のような電極(リード)を背中側から差し込みます。

このリードの差し込む位置が大切で、少しでもずれると効き目は大きく違うので慎重に位置を確認します。

位置が定まったら電極に電気を発生させるための装置を体内に埋め込みます。この装置はお腹側の脂肪の間に埋め込まれます。

お腹側に埋め込んだ装置と、背中側に差し込まれている電極をつなぎ合わせて完成です。


この手術で残った傷は、背骨に沿った傷とつなぎ合わせる時の小さな傷、そしてお腹に装置を埋め込む時の傷の3つだけでした。
RYUのお腹、ちょうど盲腸のあたりに
四角く出っ張っている部分があります。
そこに電気刺激のための電池が
埋め込まれているんです(^-^;
この治療のいいところは前もってこの治療の効果を試すことが出来る、というところです。

上のように装置まで埋め込む手術を受ける前に、背中から電極だけを差し込んで、電気を流し、痛みに効果があるかどうかのみを確認することが出来ます。
効果があれば電気発生装置を埋め込む手術をしてもらい、効果がなければ電極を引き抜くだけ。

なので、効果が無かった場合は背中に小さな点ほどの傷が残る程度で、
この手術によって状態が悪化してしまうという、デメリットが極端に少ないのです。
電気装置はリモコンによってある程度の電気の強さの調節が出来ます。
左側が埋め込んだ電気装置のリモコンです。右側が携帯電話。

ふたまわりほど大きく、厚さもありますが持ち歩くのに不便すぎるということはないようです。RYUは車椅子につけてある小物入れに入れています


このリモコンはおなかに埋め込んだ装置に近づけてボタンを押さないと作動しません。知らない間に押してしまって急に電気刺激が強くなってびっくりする、ということはありません。
この治療はRYUには効果的でした。
痛みが脊髄損傷部分から脳へ伝わる途中に、この電極が電気を発生させて伝わるのを邪魔してくれる。
それによって伝わる痛みが100から30ほどに減りました。

入院期間は、お試しをするのであれば2週間、一度で電気発生装置を埋め込んでしまうなら1週間から十日ほどになると思います。

写真はお試しのときのリモコン。線は背中から出ている電極とつながっています。


治療費はかなり高額でしたが、高額医療費として戻ってくるのと、障害者手帳を持っている方であれば、住んでいる自治体で医療助成が受けられると思いますので、実質は部屋代と食事代などの実費負担になると思います。

以上がRYUが痛みに対して行ってきた治療です。ほぼ2年半くらい痛みとせいかつしていました。今後も痛みはゼロにはならないので、一生のお付き合いになると思います。

それでも合う治療法ががあっただけ、私たちは幸せだったと思います。

ここに紹介した治療法の中で、投薬治療が効果的な方もいれば、神経ブロックが効く方もいるだろうし、電気刺激は効かない!という方もいらっしゃると思います。
なにか知りたいことがあれば、お気軽にメールをいただけたらと思います。痛みは他人にわかってもらいにくく、抱えて生活するのはとても辛いものです。諦めずに治療に取り組んでみましょう!


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